2020S 立法・行政2
2020-05-13
録画ファイル・録音ファイルをITC-LMSとSlackに掲げています。
板書は、スクショして下記に貼り付けました。
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前回終了後、多数のご意見をいただきありがとうございました。以下のように、Zoomに対する懸念を最小限とし、これまでの音声中心の良さを活かす形で、とにかく1度、Zoomを使ってやってみます。
以下のことは、時間の節約のため、授業時間中には説明しません。
授業中
Zoom Meeting ID/PasswordはITC-LMSとSlackに掲げました。
Zoomの「ウェビナー」を使います。入る方法は「ミーティング」と同じです。
学生側のカメラ・マイクは、そもそも、オンにするスイッチが表示されません。
授業中に発言は求めません。多人数であるためです。下記のテキスト送信のみ。
氏名はニックネームでOKです。
Zoomの画面は、基本的に、iPad板書・Scrapboxをお見せするだけです。
動きは少なく、容量は相対的に小さくなると期待されます。
授業中の質問等はテキストで送信してください。
原則としてSlackで送ってください。
Zoomのチャットを試みていただいても結構ですが、白石側では、たぶん単純に蓄積されていくと思うので、整理しにくいと想像しています。チャットを送る場合、白石個人宛のチャットでOKです。
休憩は何度か入れます。
終了後
上記のような画面入りの録画を、ストリーミングオンリーにより視聴可能とします(予定)。
板書ファイルは何らかの形でScrapboxの該当部分に掲げます(予定)。
上記の終了後の作業は、通常、その日の夕方くらいまでに作業します。
Slack
Slackは、引き続き使います。
授業中、Zoomの教員宛てチャットがどのくらい機能するか、未知数です。
授業時間外は、Zoomでコメント等を届けることができません。
以上の方法でデメリットが大きく出た場合等、変更は柔軟に行います。
成績評価については、教養学部の方針等もさらに確認しつつ、さらに検討させてください。7月にリアル教室での試験ができるかどうか、教養学部から5月末頃までに知らされることになっています。それまでは、具体的なことを決めにくいです。
オンライン・オフィスアワー(雑談等)についても、好意的なご意見をいくつかいただきました。ありがとうございます。前向きに検討します。取り敢えず、上記のように、まずZoomの問題に対応して、力尽きました。
以下は前回コピー
オンライン・オフィスアワーの希望なども、もしあったらお知らせください。行う場合、複数の学生とオンラインで会い、全員がカメラ・マイクをオン、となると想定しています。多くの学生が参加しやすい時間帯も教えてください。ただ、オンライン・オフィスアワーは特に、実現できるかどうかわかりません。時間的制約を含め。
「オフィスアワー」= 時間外に教員と学生が会って雑談する。雑談大事、という文化です。
今回の目標
法律の作られ方のパターンをもう一つ見る(議員立法)。
全体がA4で2頁しかない短い法律によって法律の構造に慣れる。
様々な立場を想像する、自分の考え方を整理する。
予習資料
必須.icon塩田智明「条文はどのように作られていくか」法学教室473号(2020年)
ITC-LMSで配布
「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲの冒頭と4以下」のみ、大まかでよいので、条文と照合しながら読む。
この文献についている条文でなく、授業では下記の条文を使う予定。
必須.icon通称「チケット不正転売禁止法」の条文
短い(2頁だけで全部)ので、ざっと全体に目を通す(熟読しなくてよい)。
上記塩田解説の指定箇所を読みながら、簡単に見ておく。
必須.iconマスク転売に関する政令改正
元になる法律は、自分で探してください。
授業では「条文の読み方」ばかりを説明しようというのではありません。
上記のような転売禁止は、本当にすべきなのか?
上記のような転売禁止は、実効性があると思うか?
特にマスク転売については、経済産業省のウェブサイトなどに様々な資料が出ています。それらも、余裕があればでよいので、見てみてください。
質問や感想があれば是非、知らせてください。1ツイート〜3ツイート程度の短いものでもOKです(1ツイート=140字)。Slackを使っている学生はSlackで。5月12日(火)12:30までにいただけると授業準備に盛り込みやすいです。これは成績評価には関係ありません。
筋書き
チケット転売
そもそもどう考えるか
立法過程(塩田解説)
条文の読み解き
質問
用語
マスク転売
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チケット転売:そもそもどう考えるか
オープンキャンパス「高校生向け授業」でも題材とした。
法律ができて、そう決まったから、ではない、それ以前の問題
利害関係者を想像(「ダイナミックな政治過程」)
この文献は配布していない。内容を白石から簡単に説明。
ももクロ・さいたまスーパーアリーナ・顔認証で本人確認
供給より需要が多いことが前提
供給より需要が多い以上、何らかの形で「差別」が必要
どのような「差別」?
?
?
「差別」の基準として考えられるものはいずれも対等
「差別」でなく「区別」である、という議論に対して。
いずれの「差別」を優先するかは「市場」が決めるべき
ももクロが決めるのはよい
政府が決めるのはよくない
(以上が上記文献の筆者の考え)
他の考え方
Q
「市場」という言葉を幅広くとったとき、メルカリもその利用者も市場であって、登尾の論理では、転売するかどうかはももクロだけでなくメルカリや転売者が自己判断すべきということになりませんか?
法哲学の先生で井上達夫先生の「法という企て」という文献も今回の従業と関連づけられますでしょうか?
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従来の法の状況
各都道府県の迷惑防止条例など
東京都「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」
フリマサイトは条例の「公共の場所」に当たらないのではないか(裁判所で争われた場合に負けてしまうのではないか)、という「法解釈」。
条例の解釈でも「法解釈」。
チケット転売:立法過程(塩田解説)
この筆者の立場
衆議院法制局
議員立法の案の作成
できあがった政策を法律の条文にコーディングするのが仕事
「ダイナミックな政治過程」によって政策ができあがる
法制局の担当者が個別の立法について解説するということはあまりない
議員立法(衆議院法制局・参議院法制局)については、雑誌『時の法令』などで解説されることが多い。
「のだ」は、あまり使わないほうがいいです。
「Ⅰ」
②が自分たちの仕事
「II」1
「ダイナミックな政治過程」の略述
「II」2
法案を作成するとき考えたこと
「ダイナミックな政治過程」と同時並行と思われる(次の3)
法律で「禁止」などするには、「今までxxxと言ってきたものの中味を正確に表現するとどうなるか」を考える必要がある。
(4)の法律の目的に関する記述
「II」3、特に(2)
「刑罰の謙抑性」
あわせて、「罪刑法定主義」
「無断転売により無効となる可能性が特に高いと思われるもの、すなわち」
https://gyazo.com/b289f9339016b506391d2a1b351c176c
Q
井上達夫
この法律は何をもって特定興行入場券が販売価格を超えているとするのでしょうか?つまり、アイドルのグッズとコンサートのチケットをセットで高額販売するような行為をこの法律で取り締まることは可能なのでしょうか?
刑罰の謙抑性に関連して、やむを得ない理由で手放し他人に譲りたいチケットにはどのように対応するように取り決められたのでしょうか?
チケット転売問題は数年前の法学部推薦入試のグループディスカッションの課題でしたね。
〜のだ という文言を使うべきではないのは、法の分野における説明文でですか? それとも、法のみならず心理や文学など、アカデミックな世界全体における話ですか?
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9:34
チケット転売:条文の読み解き(わずか2頁)
「Ⅲ」の1・2・3は省略
「立法事実」(9頁左下)
立法の必要性
裏返せば、法律がないために不都合な状態が生じたという具体例。
立法の謙抑性?の現れ?
「Ⅲ」4に当たる部分は以下。
逆算(「定義規定から始まるストーリー」を目的合理的に見直すと)
「特定興行入場券の不正転売」が3条・4条でターゲットとされている。
「特定ooo」
「特定興行入場券の不正転売」は2条4項で定義。
様々な要件
「要件」と「効果」
「特定興行入場券」は2条3項で定義。
塩田解説「無断転売により無効となる可能性が特に高いと思われるもの」に絞る
「興行入場券」は2条2項で定義。
予約券、予約番号、整理券、は含まない。
「興行」は2条1項で定義。
いろいろ考えてみてください。
チケット転売:質問
3条に加えて4条を置いているのは、なぜですか?
項の規定順まで考えて作っていることに感心したが、プロなら、多少未整理でも、読めるのでは?
チケット転売:用語(ここは時間はかけない)
「ものとする」と「なければならない」
「その他の」と「その他」
例:2条1項
10頁の上の図
Aその他のB
AはBに含まれる(Bの例)
Aその他B
A and B
「及び」と「又は」
例:2条1項
「及び」と「並びに」
例:7条
「又は」と「若しくは」
例:9条
「等」
例:2条3項1号の「興行主等」
これも一つの定義の仕方
法令未満の文書では、幅を持たせる(ごまかし)という場合も多い。
法令では、それなりにきちんと定義されていることが多い。
https://gyazo.com/cb3ed882bdce6d0e758963447714fff0
文章のなかの言葉・言い回しのことを、法律の界隈で、少し難しく、「文言」といいます。
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10:00
マスク転売
「委任立法」・・ここでは政令
政令を作ることをここでは「立法」と言っている。
ちなみに、政令の解釈も「法解釈」。
国民生活安定緊急措置法(という題名の法律)
国民生活安定緊急措置法施行令(という題名の政令)
政令・省令・規則は、上位の法令(多くの場合は法律)の「委任」によって作られていることが多い。
https://gyazo.com/07968b89d7b034d6f01bac7bc5b2cf1f
条例は、また別の系統
少なくとも刑罰は委任が必要
https://gyazo.com/341dcae5d1fade7e9801b674539f21de
参考)厚生労働省・経済産業省・消費者庁の説明
経緯等の詳細な説明の例
「第5回デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会(2020年4月21日)」
資料3
質問
なぜ、マスク転売禁止は、法律でなく、政令としたのですか?
なぜ、国民生活安定緊急措置法施行令は、第1条「目的」、第2条「定義」、となっていないのですか?
「比較的新しい」「法律」の話
この規制には実効性はあるのか?
上記資料3(消費者庁「緊急時におけるデジタル・プラットフォーム企業の役割」)5頁
https://gyazo.com/2b263192642206ffb1b782c82f53b44c
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一般法と特別法
広い範囲に当てはまる法(一般法)がある場合に、狭い範囲に特化して当てはまる法(特別法)が置かれる場合がある。
頭の整理のため分類すれば、
追加型(一般法に特別法が追加される)
民法709条(損害賠償請求できる)と著作権法114条(損害賠償の損害額の推定)
上書き型(一般法を特別法が上書きする)
行政事件訴訟法11条(抗告訴訟の被告は国)と独禁法77条(抗告訴訟の被告は公取委)
裁判所法24条(抗告訴訟の第1審は地裁)と独禁法85条(抗告訴訟の第1審は東京地裁)
特別法のほうが先に立法されていて、後から立法された一般法について「追加」「上書き」することもある。
時間がなかったので言わなかった重要な補足
追加型か上書き型かは、文脈や文言によって、その具体例ごとに、法解釈で決まる。
例えば、「民法709条と著作権法114条」が追加型であることは誰も争わないし、「行政事件訴訟法11条と独禁法77条」が上書き型であることも誰も争わない。両者は並存している。
相対的
「先輩と後輩」と同じ
独禁法2条9項5号と下請代金支払遅延等防止法
独禁法は、何かの特別法である部分もあれば、何かの一般法である部分もある
以上のことの板書
https://gyazo.com/cc0b56b8521912a0433164e2b6fd80ec
検察庁法関係(法律的に最低限いえる範囲の問題の整理のみ)
黒川弘務氏の勤務延長の論点(現行法における一般法と特別法の問題)
国家公務員法81条の2、81条の3
検察庁法22条
https://gyazo.com/35c7dbd666cbd898ab1b7f583896b437
以上については、このページの末尾でQ&Aの形で補足しました。
検察庁法改正案(国家公務員法等改正法案の一部)の論点
新旧対照条文はどこにあるか、施行日はどこを見れば正確なことがわかるか、わかりますね?
以下のことを押さえたうえで、議論する必要がある。
検事総長・次長検事・検事長の定年後に内閣が勤務延長可能とする明文を置こうとするもの(改正案検察庁法22条2項、改正案国家公務員法81条の7)。
81条の7は、現行法の81条の3を改正し、また、条名(条の番号)をズレるようにしようとするもの。
もともと、検事総長・次長検事・検事長の任免は内閣が行う(現行検察庁法15条1項)。
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これは、授業中掲げませんでしたが、ついでに。
前法と後法
「後法が前法より優先する」という「法格言」が言われることがあるが、あまり考えなくてよい。
実際問題としては法制局が調整し、矛盾のない法律が作られるのが通常。
前の特別法が後の一般法より優先する、ということもある。
例は多数。独禁法界隈にも多数。上記にも一例が含まれる。
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かりに、平常点の対象とする課題を出すとしても、早くとも次々回(5/27)からとします。
公正取引委員会の仕事について
(略して「公取委」、口頭では「こうとり」)
比較的規模が小さく、しかし多様な業務を行っており、国際的な業務もあるので、行政の一例として取り上げやすい。
前半は白石が講義
後半は鈴木健太さんをゲストにお招きし、あらかじめ寄せられた質問(を白石が整理したもの)に対する答えを中心とした雑談
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授業後Q&A
コロナに対する政府の対応が遅いと言われていて、何事をするにも議会を通して承諾を得て...という過程が踏まれていますが、緊急事態にそういった過程を踏むことが必ずしも必要だと思われますか。
shiraishi.icon
刑罰の謙抑性とか、自由の維持とか、そういうことを常に十分に意識できる政府なら、とりあえず問題ありませんが、そうでなければどうなるか、ということも考える必要があります。また、意識できる政府であっても、思うようにやらせていると、だんだん悪くなってくる、ということもあります。永遠の課題です。これから、少しずつ、具体例で学んでいってください。
チケット不正転売禁止法という小さな法律のなかにも多数の定義がありました。憲法の中には多くの抽象的用語があるのですが、例えば自由や幸福のように、そのような定義を付録のような形で人権宣言の中で前もって憲法を作る前に定義することが、例えばフランスではあるのですが、日本の場合、いかにして憲法の抽象的な用語を定義しているのでしょうか。
shiraishi.icon
それらについて細かな定義を置くという習慣がなかったということもあるでしょうね。定義しようと思えばできたが、後世の自由な議論に委ねた、ということもあるでしょう。定義がない以上、あまりに突飛なものでない限り、自由な解釈論に委ねられる、ということになります。学者が議論したり、最高裁で判例になったりします。憲法の授業は、そういったことの比重が大きいと思います。そうやって正統性ある定義が必ずしも最初から置かれていないのがよいことなのかどうなのか、というのは、大きな、大事な問いだと思います。
検察庁法22条が「追加型か上書き型か」という点が、十分な説明になっていないように思いました。
shiraishi.icon
私の解説が完全でなかったところがあると思います。
まず、この話では、検事長が63歳定年であることが「上書き型」であることは前提です。そして次に、
「勤務延長について検察庁法では何も定めていないこと」が、「国家公務員法では勤務延長について定めていること」に対して、
上書きして勤務延長は無しという結論となるのか、
勤務延長については何も決めていないのだから63歳定年が追加(上書きですが)されるだけで、勤務延長については国家公務員法の規定が適用されて勤務延長は可能という結論になるのか、
・・ということでした。そこのところを十分に整理できるほど、私の頭が整理できておらず、時間もありませんでした。以上のようなことで、さらに考えてみてください。
shiraishi.iconつまり、この事例の場合の「追加型」とは、「上書きされる他の規定(63歳定年)が追加されるだけであり勤務延長については一般法を活かす」という複雑な意味での「追加型」である点が、著作権法の例よりも複雑だった、ということです。